一つは血液型を決めているABO遺伝子で、O型の人ではA型に比べ1.43倍病気になりやすいことが分かりました(図1)。もう一つは胃癌のリスク遺伝子としても知られていたPSCA遺伝子で、十二指腸潰瘍になりやすいタイプの人では潰瘍のリスクが1.84倍増える一方、胃癌のリスクが約半分(0.59倍)になることが分かりました(図2)。


ではなぜ十二指腸潰瘍のなりやすさが変わるかですが、PSCAの場合遺伝暗号が異なることによって、違う長さのPSCA蛋白質が作られることを見つけました(図3A)。長いタイプのPSCAT型)は細胞の膜上に出てくるための目印(シグナルペプチド)を持っており、細胞膜上のPSCAは細胞の分裂増殖を活性化します(図3B)。その結果、障害を受けた十二指腸粘膜の修復が進み十二指腸潰瘍にはなりにくくなりますが、逆に細胞の増殖が進むことで胃癌のリスクは上昇します。一方短いタイプのPSCAでは目印を失う結果、細胞膜上に移動することができなくなり、細胞の中ですぐに分解されてしまいます(図3C,D)。分解されたPSCAは体内の免疫細胞を活性化し、この免疫細胞の攻撃を受けることで十二指腸潰瘍のリスクが増えるものの、胃癌にはなりにくくなることが考えられました(図4)

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2-4.十二指腸潰瘍のGWAS

             


 

             

世界全体の約半数が感染しているピロリ菌は胃癌や胃潰瘍・十二指腸潰瘍の原因となります。しかしながら感染者の内これらの病気になる人はごく一部であり、また同じピロリ菌が原因にも関わらず十二指腸潰瘍の患者は胃癌になりにくい事がこれまで知られていました。この様な病気のなりやすさの違いがどの様に決まっているかはこれまで明らかになっていませんでした。我々は7072人の十二指腸潰瘍患者及び健常者26116人について、約60万箇所の遺伝暗号の違いと十二指腸潰瘍のなりやすさの関係について調べました。その結果、2つの十二指腸潰瘍の原因遺伝子を発見しました。

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